私の飼っていた黒猫は、逝く時を自分で選んだのかもしれないと思うときがある。
病気でガリガリに痩せこけて、もうどうしたって身体がもたないということは分かっていたから、「元気になってね」なんて言えなかった。ただあの子が苦しまずに逝けるように願っていた。どうせ逝くのなら、私がそばにいる時にしてほしいと思いながら、そっとあの子に私の予定を話した。どうしても大切な用事があって、数日側を離れるけどすぐに帰ってくるから、それまで待っててね、って。
猫は私が家を出る前日に逝った。まるで私の予定に合わせたみたいに。ただの偶然かもしれないけど。あいつは本当に律儀で、変な猫だったなあ。
会いたいなあ。天国で何してるんだろう。「生者が死者を思い出すと、死者の頭上に花が降る」なんて話をどこかできいた。あの子が死んだ日から、一日たりとも思い出さない日はない。どうか優くて賢かったあいつの頭上に、たくさんの花が降り注ぎますように。私のすべての幸いをかけて、願ってやまない。