高いところに登れば遠くまで見える。だから
上を目指していけば選択肢は広がる、
そう思って彼は頑張っていた。でも自分は、
周囲の人間とは違うことに気づいてしまった。
色んな山道を楽しんで登ってきた人を、
ムキムキの力で一気に崖を登った人を見て、
崖に這いつくばっている自分とは
大きな力量差を感じてしまったのだ。
夢はどうしても見てしまうものなのか。
彼は、将来はあんな仕事に就いて、大いに人々に貢献したいと思った。でも、
優秀な周囲を見て、夢に向かった結果を見て、自分の無力さを思い知る。彼は後悔した。
夢は夢のまま、その方がいい。と気づくこともできずに手を伸ばしたことに。
とはいえ、上しか見てこなかったものだから、その星が消えそうになって、自分がどこにいるのかもわからなくなってしまった。
一筋の光の糸を掴んだまま立ちすくむ。
これが切れると、これまでの人生は無駄になってしまうのではないか。どこに向かうべきかわからないまま、歳だけ重ねてしまうのではないか。
彼は絶望し、富士の山へと姿を消した。