夜の静けさは、平和と同時にある種の恐怖を覚えさせる。
昼間は生き生きとしていた心も、夜になるにつれて徐々に電源が落ちるように、灯りが消えていく。
ネオン街で飲み歩くサラリーマン達はきっとそんなスリープモードとは縁遠くて。
夜にしっかり睡眠を取ろうとする僕には飲み込まれそうな大きな闇が心を襲ってくる。
生きている奇跡、呼吸ができている奇跡。その奇跡の間に流れる穏やかな時間や人の優しさにも、理不尽な怒りに振り回される中にも、小さな幸せは散りばめられていて。
民家から香る焼き魚の匂い、公園から聞こえる親子や子供たちの笑い声。
大通りを走る車の中には観光を楽しむ人たちがいる。
そんな人たちとは裏腹に、僕は日常を楽しむことが出来ているだろうか。仕事をして、コンビニに寄って、帰って、寝る。
マンネリ化した日常。一緒に帰る人間もいないし、繁華街を隣で歩く人もいない。
その中にも、ささやかな幸せを感じながら生きることが出来たなら、人生はもっとあたたかいものになるのだろうな、と思う。